京都村日記

【京都村取材記】vol.3 まわり道して育ててく

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まわり道して育ててく

植物を育てようと思ったらまず土からつくるように、地域を育てようと思ったら、人から育てていく。まわり道かもしれないけれど、土台をつくることはとても大事な過程だ。

「ひとつのことにこだわるのが大事。そして継続すること。」

京都府京丹後市大宮町の奥大野区長の川口さんは言います。

 

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元々は市役所で農業関係のお仕事をされていた川口さんは政策を進めていく中で、思うことがあったそう。

「農業のイベントで町おこしをする前に、地域にそういうことをする態勢が無かった。 だからまず5〜10年かけて人を育てていかなくちゃいけない、と。」

そこで村づくり委員会をつくり、さまざまな活動を継続してきた。 奥大野と常吉の街道にある家々の軒先にサクラソウのプランターを並べる 「花いっぱい運動」はもう20年以上も続いている。

「自分たちが楽しまないと長続きせんよね。」

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そして昨年(平成25年)からは新しい活動へステップアップ。
農家の家に泊まり、農家のくらしを体験する「農家民泊」がスタートしました。

立ち上げた翌年には横浜の中学校から修学旅行生を受け入れることに!
27名の修学旅行生を6軒の農家で迎えたそう。
地域の協力が無ければ成り立たないプロジェクトだ。

「修学旅行生を受け入れたのは京丹後市でこの村が初めてだったんじゃないかな?」

「ボランティアじゃなくて、地域にちゃんとお金もおちるし、なによりも日帰りではなく泊まることによって交流も深まる。
一泊だけだったけど、見送るときはウルっときたね。」

20年以上前に蒔いたタネがようやく咲き始めた。
まだまだこれからと言わんばかりの川口さん。

そんな川口さんのお宅、「農家民泊 シャロームガーデン」に宿泊させていただきました。

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さっそく晩ごはんの準備を手伝うことに。丹後の郷土料理である「ばらずし」の盛りつけを初めて体験しました。

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おいしい食事のあいだもそのあとも楽しい会話は止まりません!初めて来たはずなのに親戚のお家に来たような感覚でした。

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次の日の朝、川口家のご自慢のお庭、シャロームガーデンを見せてもらいました。

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お花が大好きな匡美さん。 花いっぱい運動にも積極的に関わっておられ、 9年前からはガーデン仲間たちと「京丹後オープンガーデンネットワーク」という グループをつくり、各家庭のお庭を開放するイベントなどを企画するほどに!

「道路沿いに自分たちで育てた綺麗なお花がブワーっと並んでるのを見ると嬉しくなっちゃう。」

本当に楽しんで活動していることがひしひしと伝わってきました。

次に、昨夜の会話で「ぜひ行きたい!」となったある場所へ案内していただきました。

 

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「丹後の穴」と言われているこの穴は、元々は野菜の保管庫として掘られたものです。
このあたりでは今でも使われている穴があるそう。

「地元のもんにしてみれば何にも珍しいものでもないけど、そとから来た人に案内すると喜んでくれるんだよね。」

私たちも予想以上の中の広がりに大興奮!でした。
中はひんやりとして、奥は光が全く入らないのでライトが手放せません。
音もよく響くので、最近ではコンサートをこの中でしてみたりなど、新しいコンテンツとなって使われています。

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昔この地域に住んでいた人々が生活のために使用していた自然の倉庫が、今では貴重な地域の宝物となっています。

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シャロームガーデンを出発するときに記念写真を撮りました。
三脚を出してきて、みんなで並んで撮影したときはなんだかすこし照れくさく、あたたかい気持ちになりました。

地道にゆっくり時間をかけて育てられた奥大野という地域。

「まだまだこれからも発展していきたい」と川口さんは言います。

これからも成長を続けていく奥大野にはまだ誰にも気づかれていない宝物があるはずです。

皆さんも一度、奥大野へ足を運ばれてはいかがでしょうか?

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奥大野の道には、たくさんのサクラソウがあった。一本道の両サイドに続くサクラソウの姿は決して目立つものではなかったけど、帰りを待ってくれている家族みたいな花で、なんだか心が和らいだ。奥大野の区長さんでもある川口さん、その頼りがいのある風貌は「お父さん!」と呼んでしまいそうになるし、奥さんの匡美さんは大好きなガーデニングについてずっと話してくれた。ずっと笑っていて、なによりこのウェルカム感が嬉しかった。昔、親戚のお家でいろんなお話をしてもらった思い出がふわっと戻ってきて、このまま帰りたくないなーと炬燵に入りながらみんなで話した時間は一生もの。(2014年5月)

文章:はやしりえこ/はしもとなつみ
イラスト:はやしりえこ
写真/レイアウト:はしもとなつみ

ご協力:川口さんご夫婦
2014年6月

おくおおの村

倉垣の庄


2014.06.04 / 京都村取材記