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【京都村取材記】vol.2 小さな村で暮らしていくこと | いのちの里 京都村

京都村日記

【京都村取材記】vol.2 小さな村で暮らしていくこと

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「野菜あんまりそろっとらんねえ。」

「今の時期はどこの農家さん行っても無いんですよね。
でもこっちのやつはさっき採ったばかりだからおいしいし新鮮ですよ。」

こんな会話が聞こえてくる百貨店をご存知ですか?
京都府京丹後市大宮町の上常吉にある「つねよし百貨店」。
ここは日本一小さな百貨店です。

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平成10年に地域住民が出資し、自主運営するかたちで誕生した「常吉村営百貨店」。
現在は「つねよし百貨店」と名前を変えて、「常吉村営百貨店」の理念を受け継ぎながら、地元住民による任意団体が運営しています。

百貨店には食料品や日用雑貨だけでなく、宅配便や買い物に来られない高齢者宅への配達など生活に必要なサービスまですべてを揃えられています。
また地域の様々なイベントも行い、コミュニティの場としてもなくてはならない場となっています。

「(百貨店が無くなるのは)もったいないと思った。
内情も知っている分、大変だとは分かっていたけど…。」

「常吉村営百貨店」を引き継ごうと決めたときの心情を、東田一馬さんはこう語ります。

東田さんご夫婦とつねよし百貨店

一馬さんは「常吉村営百貨店」の運営や地域活動を半年間経験され、その後家族で常吉に移住し、今ではご夫婦で「つねよし百貨店」の運営をサポートしています。
今回の取材では、常吉の案内をしていただきました

 

つねよしQ&A

Q.「『つねよし百貨店』になったことで変わったことはありますか?」

A.「良い意味で肩の張った感じがとれてきたと言いますか…
始まりは、買い物難民をどうにかしなくては!という『住民のため』の部分が大きかった。
今は、いいお店、いい場所、みんなの集まるところをつくりましょうという感じです。」

Q.「みんなが集まるのに工夫したところはありますか?」

A.「売り場面積はまえの4分の1くらいでしょうか。
壁にズラッと並んでいた商品棚をやめて、自由に使えるスペースを増やしました。
壁の木が見えるので雰囲気もだいぶゆったりしたと思います。」

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地元の新鮮なお野菜がズラリ!旬ではない野菜はあまり手に入らない。「ニーズに応えるわけではなく、あるものをお裾分けする」感覚で仕入れているから。

昼間はお客さん(というより近所のおじいちゃんおばあちゃん)が入れ替わり立ち替わりやってきてはお店のスタッフさんと楽しそうにお喋りしていって、夕方には学校から帰ってきた子供たちが遊びまわっている。
まさに、みんなの場所だなあと感じました。

取材中やってきたおじいちゃんと一馬さん。商品をお家へ配達予定でしたが、百貨店に直接取りに来たそう。 つねよし歩き

 

つねよし歩き

1. はた織り機

つねよし百貨店を出てすぐにどこからともなく聞こえるガシャーンガシャーンというリズミカルな音。 一馬さんが「こっちだよ」と案内してくださったお宅には、ものすごい重量感のある機械たちが!

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「子供もみんなおらんからね、今でも朝から晩までここ(はた織り場)におるよ。」

丹後では、はた織り産業がとても盛んでしたが、織物をしている家も今ではピークの10分の1以下だそう。
この家のおばあちゃんは本当にお元気な方で、機織り機が鳴り響いているのもなんのその、あれは何?これは何?という、はた織りビギナーな取材陣の質問にハキハキ答えてくれました。

いまは帯をメインに織っているそう。設計図と実際にできたもの。

 

2. 平地地蔵

次に案内されたのは常吉のアイコン的存在である、平地地蔵。
なんと高さが5.3メートルもあります!

冬にはワラでつくった蓑をかぶせるのが風物詩となっているそう。お地蔵さんの足元につるしてありました。

 

3. 常吉小学校跡地

地域のみんなでお花見をしたり、イベントを開催したりといろんな機会で使われているそう。

校庭から集落をぐるっと見渡せます。村時間を感じるのどかな一時。

校庭として使われていたところ。桜に囲まれていて綺麗でした。

さて、つねよし百貨店に戻ると、学校から帰ってきた小学生たちがたくさん遊びにやってきていました。

帰ってきた一馬さんに駆け寄ってくる子供たち。とっても元気。

百貨店にはスクールバスや保育園の送迎バスもやってきます。ボランティアの見守り隊のおじいちゃんとあそぶ保育園児たち。東田さんご夫婦の息子さんも。

一馬さんにこれからの百貨店についてどう思っているのか聞いてみた。

「村の人たちの暮らしを維持できる場所でありたいと思う。」

イベントなど関係なく、普段の生活のなかで自然に人の集まる場となった百貨店。
利益倍増や業務拡大を目指すのではなく、この小さなスケールでできる範囲を続けることが大事ということでしょうか。

道で出会ったおばあちゃん。今でも元気に畑仕事をしています。

常吉で出会った人々は年齢問わず、みなさんパワフル。 それでも人口は減少し続けています。

山間部にあるこの小さな村で暮らすことは、楽しいことだけではなく、苦労することもたくさんあるでしょう。
でも、みんなの集まる場所がある。言うなれば村の居間でしょうか?
そこに行けば誰かの知恵をお裾分けしてもらえるかもしれない。
ただ話をするだけで気持ちがラクになるかもしれない。
そんな場所があることが、ここに住みたい理由に十分なると感じました。

「ここは水がおいしいから、何育てても美味しいんですよね。
美味しいものが食べたいからお店をやるのが楽しいんです。」

と、笑顔で話す一馬さん。
美味しいものが食べたい方にとっても、住みたくなるところみたいです。

最後に、これからの常吉にどんなひとが住んで欲しいか聞いてみました。

「昔ながらの生活がいいな、と思う人に住んで欲しいかな。
特に食の大切さや、暮らし、子育てを大切にしたい人。
僕自身、息子のためにこういう暮らしを残したいという思いでやっているので。」

「おいしい水、新鮮な魚、野菜、お米が揃う地域なので、最高の素材を活かしてくれる、ワールドワイドで超一流のシェフ、パン職人、パティシエさん、お待ちしています! ただし、都会のようなマーケットはないので儲けは期待しないでくださいね。」

「暮らし」にこだわった生活に興味のある方は一度話しを聞きにいってはいかがでしょうか?

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以前、一馬さんから「常吉はとってもあたたかい地域で、すごくいいなと思って移住した。」という話を聞いたことがあり、あたたかい地域って一体どういうことなんだろうと思ったことを覚えている。
そして迎えた今回の取材。とにかくみんなよくしゃべる。聞かれていないこともしゃべる。とっても楽しそうにしゃべる。夕方になると子供たちが帰ってきて ドッジボールが始まり、怪我して泣いてまた遊ぶ。そこにあるのは誰もが通過してきた時間。ありのままの集落、背伸びはしない。忘れかけていた「ありふれた 時間」を思い出させてくれる常吉の人々。東田さん夫婦がここで生きていくと決めた理由が見えた気がする取材でした。(2014年5月)

文章:はやしりえこ/はしもとなつみ
イラスト:はやしりえこ
写真/レイアウト:はしもとなつみ

ご協力:常吉のみなさん
2014年5月

つねよし百貨店HPリンク


2014.05.10 / 京都村取材記